カスタマーハラスメントについて その1

健康・メンタルヘルス関連
最近、カスタマーハラスメントという言葉や行為を、頻繁に見聞きするようになりました。
カスタマー(つまり自社から見た顧客)より、ハラスメント行為を受ける総称で、代表的なものでは、小売店のお客様から小売店の店員等に対するハラスメント、介護福祉事業において、サービス利用者からサービス提供者側従業員に対するハラスメント行為など、時を場面を考えると様々なケースが想定されます。

東京都では、すでに令和7年4月1日より、カスタマーハラスメント防止条例が施行されており、この流れは全国に波及していくことが見込まれます。
厚生労働省によるハラスメント発生状況の実態調査の中で、顧客や取引先からの暴力や、悪質なクレーム等の著しい迷惑行為のことを「顧客等からの著しい迷惑行為」と位置付け、これを「カスタマーハラスメント」として調査を行っています。
商取引では、売り手と買い手がいて、営業行為を行ったり、その他折衝の場面が多々存在します。

どのような場面においても、人と人の間に生じる折衝、交渉、営業等であることから、その場面には必ず何らかの「感情」が伴い、この感情が取引などを左右することがあります。
良い意味では、「○○さんだからこの商品を購入したい」などという例がありますね。

では、悪い意味を想像したとき、どのような展開が考えうるでしょうか?
一例として、「○○さんが勧める、✕✕という商品は良いと思っていたけれど、期待外れだったので購入できないな」と言われた場合、これは単に相手の期待値と、提供できるサービスや物品との間にギャップがあったものと捉えることができるでしょう。

つまり、売り手と買い手の思惑の単純な不一致であり、ごく一般的にありうるお話ですので、カスタマーハラスメントの問題にはなりません

では、次の場合を、身近で起こりそうな2つのケースに分けて考えてみましょう。

あなたは、営業職として顧客企業との打ち合わせで、15時に訪問する約束を入れていましたが、その前の予定が想定外に長引いてしまい、当初の約束から1時間遅れの16時に到着となる見込みで、あらかじめ14時頃、顧客の担当者に予定の時刻を変更してほしい旨を連絡しようとしています。


実際の顧客訪問は、企業の営業職だけでなく、運送業個人宅等のリフォーム等工事電気機器の点検調査ガス機器の点検調査訪問介護など、多くの方が実際に携わっています

1つ目のケースとしては、相手が時間的な余裕やその他業務に関しても余裕があり、会議室の予約等も簡単に変更できる場合です。
※ケース2との違いを明確化するため、好条件を並べた例にしています。
この場合は、時間的にも余裕があり、業務都合もつきやすく会議室の予約なども簡単に変更できるため、『心の余裕があって』まあ色々と事情があるだろうし、しょうがないことだ」と理解してもらえそうです。人によっては「どうして1時間遅れたのですか」などと言及される方もおられるかと思いますが、総じて大きなトラブルに発展する要素は少ない想像することができます。

次に2つ目のケースを考えてみましょう。
ケース1とは異なり、会議室の予定がピンポイントでしかとれず変更が難しい状況、しかも変更の調整を入れるには、その担当者が最も苦手とする相手との調整が必要で、尚且つその担当者が業務の締め切りに追われており、心理的・時間的余裕がありません
※ケース1との違いを明確化するため、悪条件を並べた例にしています。

リスケジュールの連絡を入れる際、相手の状況や背景事情が見えない中、業務上とはいえ、自身の都合によって行うため、申し訳ないという気持ちを伴うことは、ケース1もケース2も同じです。
当然、お詫びを入れながらの連絡となります。これはケース1もケース2も共通です。

不思議と人間は、例え仕事上であっても、その時の自身が置かれた状況によって話の口調や態度に自身の状況が現れてしまうことがあります。それは、人間なら誰しも感情があるため、ある程度は仕方のないことです。

ケース2の場合、顧客の担当者次第では、カスタマーハラスメントに発展してもおかしくない状況にあります。

大半の場合は、遅れる理由などを聞いたうえで、少々の嫌味や愚痴などを言うことがあっても、追い込まれて忙しい状況の中、調整を図ってリスケジュールをしてくれるケースで、この場合の少々の嫌味や愚痴は、カスタマーハラスメントに該当することはないでしょう。

稀に、リスケジュールの電話で怒鳴り散らしたり、訪問後も怒鳴ったり、土下座を強要したりするケースなどがあり、ここまで行くと、カスタマーハラスメントの問題が絡んできてしまします。
今回はカスタマーハラスメントの定義や、カスタマーハラスメントが発生しそうな場面の例を取り上げてみました。

カスタマーハラスメントだけでなく、いわゆる「○○ハラスメント」の共通項として、行為者の感情や思考が絡んでいることが見えてきます。

次回は、感情面・思考面からカスタマーハラスメントについて考えてみたいと思います。

コメント