熱中症対策が罰則付きで義務化されます!
日本の夏の気候が年々厳しくなっており、熱中症の発生が増えています。
以下の資料は厚生労働省作成のものとなりますが、年々夏の暑い時期が長くなり、厳しさが増していることを示していますが、この記事をご覧の皆様も酷暑を実体験されていると思います。
職場の熱中症による死傷者数は、2020年に一旦落ち着いたものの、その後は2024年にかけて急上昇しています。
厚生労働省の資料によると、以下の状況とのことです。
2024年の1年間の職場における熱中症の発生状況を見ると、死亡を含む休業4日以上の死傷者 1,195人、そのうち死亡者は30人となっています。
業種別にみると、死傷者数については、建設業 216 件、製造業 227 件となっており、全体の約4割がこれら2つの業種で発生しています。
また、死亡者数は、建設業、製造業及び運送業の順に多く、多くの事例で暑さ指数(WBGT)を把握せず、さらに熱中症の発症時・緊急時の措置の確認・周知の実施を確認出来ませんでした。
また、糖尿病、高血圧症など熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病を有している事例も見られ、医師等の意見を踏まえた配慮がなされていなかった事例もありました。
熱中症による労働災害防止が強化される理由
上記厚生労働省の資料から見て取れるように、職場における熱中症対策が不十分、あるいはずさんな管理がされていたケースが多発していたと容易に推測できます。
年々夏の暑さが厳しくなる中で、厚生労働省が、以前より毎年「STOP熱中症クールワークキャンペーン」を展開しているにも関わらず、熱中症対策の罰則付きの義務化に舵を切り、企業において熱中症対策に本気で取り組むよう要請するため、同時に熱中症対策の手順を公開するに至ったものと思われます。
企業に求められる熱中症対策の具体的内容について
2025年6月1日以降、熱中症のおそれのある作業、具体的に記すと…
WBGT28度以上又は気温31度以上の環境下で連続1時間以上又は1日4時間以上の実施が見込まれる作業
を対象として、事業主に対し、具体的な熱中症対策を講じることが義務付けられます。事業者が講じるべき熱中症対策は、大きく以下の3点になります。
1:報告体制の整備
2:実施手順の作成
3:関係者への周知
1:報告体制の整備をしましょう
熱中症のおそれがある労働者を早期に発見・対処できるよう、熱中症の自覚症状がある労働者や、熱中症のおそれがある労働者を見つけた者が、その旨を報告するための仕組み作りが求められます。
具体的な方法として、事業場における緊急連絡網を整備する、緊急搬送時の連絡先及び所在地等の作成などが挙げられます。
これらとともに、予防的・積極的に、熱中症の症状がある労働者を見つけるための措置として、職場巡視の頻度向上や一人作業の撲滅(ペア作業)、ウェアラブルデバイス等の活用、建設業等現場における遠隔臨場などの措置を講じることが、通達で推奨されています。
2:実施体制の作成をしましょう
熱中症予防の体制を作成・的確な運用をしていたとしても、職場における熱中症のリスクを削減は可能ですが、実際の熱中症発生をゼロにすることは不可能です。
そこで重要になるのが、熱中症の恐れのある労働者を把握した場合に迅速かつ的確な対処ができるような実施体制を整えることが必要です。
以下、厚生労働省が推奨するフロー図を掲載いたします。
3:関係者への周知について
これまでの対策について、あらかじめ関係者に周知し、万が一の際に機能するようにしておかなければなりません。
「関係者」とは、労働者だけでなく、労働者以外の熱中症のおそれのある作業に従事する者も幅広く含まれることを知っておきましょう。
罰則について
熱中症対策の体制整備を怠った場合の罰則について
企業における熱中症対策は、罰則付の義務規定となる見込みです。
これまでにご紹介した…
1:報告体制の整備
2:実施手順の作成
3:関係者への周知
これらの対応を怠った場合、法人や代表者らに6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
※記事執筆時点(2025.4.14時点では、罰則の詳細は公布されていないため、「可能性」と記載しております)
また、熱中症対策義務化の対象作業に該当しない業務においても、作業強度や着衣の状況等によっては、上記の作業に該当しない場合であっても熱中症のリスクが高まりますので、上記に準じた対応が望ましいとされます。
企業の安全配慮義務の一環として、必要な熱中症対策を講じられるように準備を進めましょう。
4月は「準備期間」です!
熱中症対策が罰則付きの義務化となりますが、このような法改正をするにあたり、厚生労働省がチェックリストを作成しています。
厚生労働省作成のチェックリストを以下添付しますので、対策ができているかどうか、何の準備が必要か確認しておきましょう。
ちなみに、重点取組期間は7月と明記されていることも注目です。
普段の生活でも熱中症対策を!
これまでは、労働災害防止の観点からお話してきましたが、普段の生活でも熱中症に注意することに越したことはありません。
熱中症予防の普及啓発サイトへのリンクを貼っておきますので、リンク先をブックマークいただくと良いかと思います。
厚生労働省:熱中症予防のための情報・資料サイトへのリンク
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