労働者目線で見る労務管理のQ&A(年次有給休暇編)
労働者目線から、労務管理に対して疑問に思いがちな項目について、一問一答のQ&A形式にしてみました。

にしたくさんにお聞きします。
就職して10年が経過しますが、毎年会社から付与される年次有給休暇は決まって10日です。
友人が勤務している企業では、年間20日の年次有給休暇が付与されるようなのですが、年次有給休暇の付与日数は、会社ごとに違うのでしょうか?

ご相談いただき、ありがとうございます。
年次有給休暇の付与日数は、労働基準法で定められています。
また、年次有給休暇は「正社員」だけでなく、「パートタイム」「アルバイト」なども含む全ての労働者に与えられる権利です。
パートタイムやアルバイトといった職種でも、週の出勤日数が正社員と同じであれば、働く時間の長さに関わらず、同じ年次有給休暇の日数を付与する必要があります。
1週間の労働日数が正社員よりも少ない労働者の場合は、「比例付与」という形での年次有給休暇を付与するルールがあります。

ご相談者様がお勤めの企業様におかれましては、直ちに是正が必要になります。

ありがとうございます。
会社の人事総務担当者に、それとなく聞いてみます。
ついでにお聞きしたいのですが、私の会社では年次有給休暇を取得するときに、休暇を取得する届出書に理由を書いて上司に提出して、上司の承認をもらってから休暇を取るルールになっています。
近々新しいゲームソフトが発売になるので、発売日を楽しみにしているのですが、出勤日なので、休暇を取得したいと思っています…。このような理由は認められないですよね?

年次有給休暇には、「労働者が自由に取得できる権利」があります。
つまり、基本的に有給休暇の取得理由は問われませんし、あらかじめ取得する日が決まっていれば、「○月○日に休暇を取得します」のみで構いません。
ただし、起床時に発熱などの体調不良で、急遽お休みをせざるを得ない時は、体調不良でお休みする旨を会社に連絡しないと、無断欠勤になってしまいますので、この点だけは注意してくださいね。

にしたくさんにご相談なのですが…
実は、会社を辞めるので、年次有給休暇を消化中なのですが、退職日までに消化しきれない日数があるのです…。
友人の会社では、消化しきれない日数の年次有給休暇を、会社が買い取ってくれたと聞いたのですが、私も会社にお願いすれば、残りの年次有給休暇を買い取ってもらえるのでしょうか?

ご相談いただき、ありがとうございます。
「退職時の余った年次有給休暇を会社に買い取ってもらえるか?」については、意外と多くの方が疑問に思われていると感じます。
まず、原則として、会社に年次有給休暇を買い取ってもらうことはできません…が、これは法律で禁じられているものではないのです。
年次有給休暇の本来の目的は、休暇を上手に利用して、体力の回復やリフレッシュを図って、上手に休んで気持ちよく働きましょう。年次有給休暇を取得したときは、その日は働いたものとして取り扱いますよ、というものです。
退職時に余った年次有給休暇を買い取る企業は極めて少数かと思いますが、その理由は「公平性に欠ける可能性がある」と言えるでしょう。
Aさんが退職するときには余った年次有給休暇を買い取ってもらえたのに、Bさんが退職するときには買い取ってもらえなかった…となると公平性がありませんよね。
念のため、会社の就業規則などに記載があるか確認することをお勧めします。

にしたくさんに質問です。
会社で人事業務を担当しているのですが、時間単位で取得できる年次有給休暇を新たに導入することになりました。
どのような手続きがあり、気を付けるべきところがあれば教えてください。

ご相談いただき、ありがとうございます。
時間単位の年次有給休暇の導入は、従業員の方々にとってもメリットがあり、会社としても年次有給休暇の取得促進につながるので、とても良いことと思います。
まず最初に、気を付けるべき点をご説明しますが、こちらは単純なお話で、「時間単位の年次有給休暇を設定できる上限日数が5日までが上限」ということになります。
次に手続きについてお話しますが、まずは就業規則を改定しましょう。
厚生労働省のモデル就業規則をそのまま掲載しますので、アレンジしてお使いください。
(年次有給休暇の時間単位での付与)第○条 労働者代表との書面による協定に基づき、前条(注1)の年次有給休暇の日数のうち、1年について5日の範囲で次により時間単位の年次有給休暇(以下「時間単位年休」という。)を付与する。
- 時間単位年休の対象者は、すべての労働者とする。
- 時間単位年休を取得する場合の、1日の年次有給休暇に相当する時間数は、以下のとおりとする。
- 所定労働時間が5時間を超え6時間以下の者・・・6時間
- 所定労働時間が6時間を超え7時間以下の者・・・7時間
- 所定労働時間が7時間を超え8時間以下の者・・・8時間
- 時間単位年休は1時間単位で付与する。
- 本条の時間単位年休に支払われる賃金額は、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金の1時間当たりの額に、取得した時間単位年休の時間数を乗じた額とする。(注2)
- 上記以外の事項については、前条(注1)の年次有給休暇と同様とする。
(注1)モデル就業規則では、年次有給休暇の時間単位での付与に係る規定の前条に年次有給休暇の付与日数等が規定されているため、このような書きぶりとなっています。
詳しくは、厚生労働省ホームページ「モデル就業規則」をご覧ください。
(注2)時間単位年休の1時間分の賃金額は、①平均賃金、②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、③健康保険法第40条第1項に定める標準報酬月額を30分の1に相当する額(1の位は四捨五入)(ただし、③については労働者代表との書面による協定が必要です。)をその日の所定労働時間で除した額になります。①~③のいずれにするかは、就業規則等に定めることが必要です(労働基準法第39条第7項)。
次に、就業規則に定める内容について、労使協定を締結します。モデルとなる協定書の内容を掲載しますので、アレンジしてお使いください。
○○株式会社と○○労働組合とは、標記に関して次のとおり協定する。(対象者)第1条 すべての労働者を対象とする。(日数の上限)第2条 年次有給休暇を時間単位で取得することができる日数は5日以内とする。(1日分の年次有給休暇に相当する時間単位年休)第3条 年次有給休暇を時間単位で取得する場合は、1日の年次有給休暇に相当する時間数を8時間とする。(取得単位)第4条 年次有給休暇を時間単位で取得する場合は、1時間単位で取得するものとする。
○○○○年○月○日
○○株式会社 総務部長 ○○○○
○○労働組合 執行委員長 ○○○○
就業規則の改定、労使協定の締結を行った上で、管轄労働基準監督署に届け出ることにより、時間単位の年次有給休暇制度の運用が可能となります。
もしお困りの際は、事業所にお伺いして、しっかりお話を聴かせていただいたうえでご相談に応じますので、またお気軽にご相談いただけますと幸いです。
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